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閑話休日

「キール……?」  くるみもメルフィーネも、じっとキールの顔を見る。疑念が強くなったことで、認識阻害の魔法が無効化し、その顔が手配書にある顔と一致した。 「逃げるぞ、ノエル!」 「え? ええ?」  レムティアナイツが動き出す前に、キールはノエルを連れて逃走したのだった。  キールとノエルが去った後。 「ああああああああ! 許せません! あの男、キール! 許しませんよ! 絶対!」  メルフィーネがめちゃくちゃ荒れていた。 「人のことをバカにして! よくも、よくもぉ!」  地団駄を踏んで悔しがるメルフィーネを、くるみがまあまあと落ち着かせようとする。 「メ、メルフィーネちゃん、どうどう。ほら、キールは正体を隠してたんだし、ね?」 「余計許せません! わかってたら最初から捕まえてました!」  真っ赤になって怒っているメルフィーネを見て、これはしばらく放っておくしかないなとくるみは諦めた。 「あ、そう言えば、キールにもらったぬいぐるみ、どうするの?」  くるみに問われ、メルフィーネはうっと黙る。  しばらくもごもごした後、唇を尖らせながら言った。 「ぬ、ぬいぐるみに罪はありませんから……こちらで保護します……」  そんなメルフィーネに、くるみは思わず苦笑をこぼした。  と、そんな二人に声がかけられる。 「ああ、彩姫さん、レオニスさん、先ほどの患者さん、小林さんと中村さんはもう帰ってしまわれたのかな?」  声をかけてきたのは、この病院の医師だった。 「あ、はい。帰っちゃいましたね」  キールやノエルのことを話すわけにもいかず、くるみはそう答えるに留めた。 「そうか……あの二人は恋人同士なのかな?」  医師の問いに、くるみは曖昧な表情をする。 「いえ……どうなんでしょうね。そういう関係とも違うと思いますが……」  主と副官の関係などと、どう説明すればいいのかわからないので、くるみはそうとだけ答えた。 「わかった。ありがとう」  礼を言って、医師はくるみとメルフィーネに背を向ける。  診察室に戻る道すがら、医師はノエルのカルテを見ながら呟いた。 「もしも恋人同士なら、将来に関わる大事な話をしなきゃいけなかったんだけどな……」