たっぷり数日はうなされるネタに困るまい。
けれど、それと引き替えにわかったこともあった。
最初、ピエナはマシェロットが魔法か何かを使ってインチキしているのだと思った。けれど、捕まったとき、彼女がつぶやく嫌みったらしい叱責を思い起こしてみると、自分の行動にどれほどのアラがあり、どうやって彼女に発見されたかを思い知らされるのだ。
もうひとつ、これが再試験という名のシミュレーションであることも気づかされた。
実戦では、見知らぬ場所で見知らぬ敵と相対することがほとんどだ。力も違えば知能も違う。罠を用い徒党を組んで襲ってくることもあれば、単騎特攻してくるかもしれない。相手が人間でない可能性さえある。
これは、そういった状況にどれほど適応できるかを見る試験なのだと思う。
(……だとしたら、どうにも見込みは薄いけどね……)
胸中で自分を皮肉り、立ち上がる。もう、腕も脚も自分のものではないようだ。試しにつねってみるが、痛くないのが泣きたいくらいおっかない。
(……大尉は……どのくらい疲れてるんだろう……)
気を抜けば身体が泥になって溶けてしまいそうな疲労感。靄がかかったように不鮮明な意識で、せめて疲労は同じはずだと考える。そう信じたい。さもなくばもう、足など動かない。それとも、獣人とはそこまで決定的に身体能力が異なる存在なのか。
(あ……そろそろ、いいみたい……)
剥いで筒状にした樹皮に着衣の切れ端で底を作り、砂や砂利を詰め、泥水を濾過する。煮沸のひとつもしたいがそれは無理だ。火にせよ魔法にせよ、雑菌が死ぬほどの熱量を生めば、自分だって相手の居場所を検知できる。
「こく、ごく……ふ……はっ……」
樹皮に貯めた生臭くぬるい水が喉を下る。あまりの気持ち悪さに意識が覚醒する。
体内時計をロード。
(39時間02分……まだ、58分も残ってる……私、何回死んだの……?)
手の甲に施したマーキングが、マシェロットに19回殺されたことを示していた。いま、水を飲んでいる自分が最後なのだ。後はない。
今度こそ、完全に意識がはっきりとする。
(あと1時間逃げ切れば、合格……)
しかし、その1時間がとんでもなく長く感じられる。もしかしたら自分にとって、人生最後の1時間なのかも知れない。途中から試験官をサボって寝てるんじゃないかと思うほど捕縛ペースが落ちたものの、それでも残り時間だけで、自分は3回死んで釣りがくるのだ。
(動かなきゃ……)
森の深奥部に入ってしまったのか、緑と障気がひときわ濃密なエリアだった。頭上を覆う緑は遠近感が狂うほど分厚く、漏れ入る光は悲しいくらいに弱々しい。立ち並ぶ木々は樹齢千年を超えそうなものも多く、よじくれた幹は胸が悪くなりそうなまがまがしい様相だ。もしかしたらこの障気が身を隠してくれているのかもしれないが、大尉のことだ、さして時間もかからず、消えた人間と知覚の及ばない深奥部を結びつけることだろう。
(さあ、行かないと……)
見つかりもしないうちに動く不安はあったけれど、動かずにいることの方がずっと不安だった。
ところどころにある天蓋の隙間から恒星の位置関係や、高木などの数少ない目標物を確認する。そこから現在地と移動距離、敵の展開範囲を予測しつつ、ピエナは一歩一歩痕跡を消して移動する。
耳に痛いほどの森の静寂。ときおり思い出したように、遠くでぎゃあぎゃあと鳥たちが飛び立っていく。カミソリのように意識の研ぎ澄まされたピエナは音の到達より先に漠然と現象を察知していて、遅れて聞こえる鳴き声がどうにも気持ち悪くてたまらない。
三歩目を踏み出したとき、岩に生したコケで、踏ん張りのきかない足が滑った。
「っ……」
危うく出かけた声を噛み殺しながら、近くの樹に手をついて体を支える。
そして、それが起こった。
「っ、きゃああっ!?」
ピエナの右手にツタが絡みつき、小さな体が一気に数メートルの宙空へと吊り上げられた。意識だけはしっかり反応していたが、限界をとうに超えた身体では、抵抗らしい抵抗もできない。
(大尉のしかけたブービートラップ……? ううん、違う……これは……!)
「女か……ぐふふ……こんなところに迷い込むとは、運がなかったな」
魔物だった。宙づりのピエナを取り囲むように、何十本ものツタが一斉に鎌首をもたげる。魔物の触手は二種類で、植物のツタと、緑色の、男性器を模した形状のもの。素早く視線で追うと、どちらも正面の老木から伸びている。表面に目鼻のような亀裂の入ったこの老木は、何百年もの時を生きる間に自我といらぬ知恵を持ったのだろう。
「私は、忙しいのよ……こんなところで捕まってる場合じゃないの!」
左手で逆手に抜いた剣を振るい、右手のツタを斬り落とす。
だが……
「くっ!? 斬っても、すぐ新しい触手が押し寄せて……!?」
「さて、手癖の悪い小娘め、どうしつけてくれようか」
「は、放せ!」
腕を振りぬき、伸びきったところに何本ものツタが絡みついた。そのまま力の入らない状態で固定されてしまう。
「放せ? ……娘、もう少し立場をわきまえたらどうだ?」
「あうっ!? 剣が……!」
ぎりっ、と腕がねじられて、反射的に手が開いた。唯一の武器が手を離れ、墓標のように地面に突き刺さる。腰に帯びていたもう一本の剣も、ほとんど同時に触手がはじき飛ばした。
「ぐふふ……ただ森に棲んでいただけだというのに、お前たちの仲間には世話になったからな……」
「それって……!」
軍の掃討作戦のことだ。だとすると、この魔物は作戦を免れ、生き延びた口だろう。
樹皮が波打ち、横一文字の裂け目が顔の如くに吊りあがる。その様は、まるで唇をゆがめてピエナをあざ笑っているかのようだ。
「その借り、返してもらうぞ……お前の体でな、ぐふふ……」
「放しなさい! そんなの私は無関係よ! やらなきゃいけないことがあるのよ、私には! 邪魔しないで、このっ!」
魔物はピエナの叫びを黙殺して、無数の根を蠕動させた。じりじりと景色が動く。ピエナを吊り下げたまま、どこかへ移動しているのだ。
「喜べ、娘。巣にはお前たちに殺されかけ、怒り心頭の仲間もいる。連れ帰って、お前が死ぬまで順番に犯してから、儂らの養分にしてくれるわ」
「放せって……言ってるのよ! 私はまだ終わってないのに……どうしてあなたなんかに邪魔されなきゃ……この、このぉっ!」
筋肉痛の激しい腹筋に無茶を聞かせて体を折りたたみ、左足の爪先で手首のツタを狙う。不自由な体勢から飛ばしたブーツの先端が、狙いどおりのポイントに命中する。
「くっ……硬い!?」
けれど、爪先には絶望的に鈍い感触が伝わった。不自由な体勢からの、力の乗らない蹴りだということを差し引いても、徒手空拳で抗える相手でないことを思い知る。
「なんだ、いま、何かしたのか?」
「武器……武器があれば……! あうっ!? あ、足に……!?」
ピエナの死角からツタが伸び、両足首に巻きついた。手首と足首をそれぞれ上下に引っぱられ、ピエナの体が板きれのように反り伸びる。胸が反り、埃まみれのマントを膨らみかけの乳房が押し上げた。
「つ、ぁ……!?」
「うるさいぞ、娘。あくまでも暴れるというのなら……どれ、おとなしくさせてやるか……」
しわがれた声に呼応して、何本もの細いツタがピエナの体にからみついた。彼女のマントと着衣をびりびりと引きちぎり、白い胸元や健康的な下肢を容赦なく露出させていく。
「あ……ああっ……」
露わにされた秘唇に、するすると男根型の触手が近寄った。
「ぐふふ……ずいぶんと汗臭いな。それに、ここはひどく小便の匂いがきつい。これはどうしたことだ?」
「あっ、あ……!? っ、ぁ……や、やだっ、やめて……匂いとか、嗅がないで……」
予想外の方向から攻撃され、どうしようもなく恥ずかしくなった。ピエナは足を閉じようとする。だが、からみついた触手はそれを許さない。必死で閉じようとし、けれど閉じられない膝の間を、男根型のペニスがのっそりと進んでくる。
「ひぅっ、あ……当たってる!? ぬるぬるで、冷たくて、気持ち、悪い……!」
とうとう触手が秘唇に触れた。老樹に似つかわしくない瑞々しさで、尿道口にあたる部分には先走りのように粘液が盛り上がっている。
「汗で蒸れてほぐれているぞ? だが、ぐふふ……これなら、思ったよりもすんなりと入りやすそうだ」
「入、るって……ちょ、やだ、そんな……無理よ、私まだ、そんな太いの……ああっ、っくぁあああっ!?」

ピエナの膣口に、魔物は容赦なく剛直を押しつける。触手の粘液とピエナ自身の汗だけを頼りに、めりめりと恥裂を割り裂いてくる。
「かはァ……あっ! 入っ、た……ぁ、ああっ、こんな奥、までぇ……ひぐ、んんっ……!」
「きついな……どうやらもう少しほぐした方が、儂にもお前にも都合が良さそうだ。壊れては、面白くないからな」
「ひぁっ、あ、冷たっ……!? や、だ……なにか、はぁ、はぁ……出てる……私の中で、これ、ぬるぬるして……!?」
膣内に埋没した触手の先端から、冷たい粘液がぢゅくりと漏れだした。疑似ペニスがゆっくりと律動し、膣襞の隙間に汚らわしい分泌液を塗り込んでいく。
「だんだん儂の肉棒に慣れてきたようだな。きゅうきゅうと締めつけてくるぞ」
「勝手なこと、言わないでよ! 誰が、こんなものに……っ、つ、あ!?」
訓練所におけるピエナの耐快楽訓練は始まったばかりで、性感に耐えるよりも、恥辱と痛苦を制御する方に忙しいのが実情だった。そこに、体躯に合わない極太の異物を押し込まれた。痛みとおぞましさに、時折意識が遠のく。
「動いてる……痛っ、ァ……! ごりごり、されて……はぁはぁ、っ……私の身体、こんな魔物を悦ばせるのに使われて……悔しい……!」
足の間から引き裂かれそうな激痛に、ピエナの美貌が強ばる。それでも、痛みが正気を保ってくれることは幸いだった。快楽に自分を見失い、最悪の醜態を晒すことだけは避けられる……そう、思っていた。
「ぐふふ……そうか? 本当に、まだ痛いのか?」
「当たり前でしょ! こんな太くて、硬いの……突き刺されて……はぁはぁ、苦しくて、痛いに……あ、れ……?」
不意に、耳の奥、どくんっ、という強い鼓動をピエナは聞いた。胸郭を破って飛び出しそうな勢いで、心臓が脈を打っている。
「はぁ、はぁっ……そ、そんな!? おかしい……はぁ、ん、んんっ……こんなの、どうして、私……!?」
ピエナの胎内で信じがたい淫悦が弾けた。上下に引っぱられ、伸びきった身体がひとりでに暴れた。びくびくとわななく腹の下、膣奥からどろりと愛蜜があふれ、結合部のわずかな隙間からこぼれ出る。
「ふぁああああああっ!? ぁ、かはっ、ァ……! どう、して……こんな……!?」
何かのネジがごっそり抜け落ちたように、身体が淫らになっていた。頭の一部に冷静さが取り残されているせいで、自分が狂う恐怖を感じなくてはならない。そのことがどうしようもなく恨めしい。
「そんな……ん、ぁう……んンっ……!? はぁ、はぁ……痛みが、消えて……気持ちいいのだけ、残ってる……!? ぁあう、ん、んんっ、ン……!」
「ぐふふ……感じ始めたようだな」
「なに、したの……!? 私の体……あうっ! こんな感度、っ、知らないのに……」
「お前の膣壁に塗りつけたのは痛みを抑え、性感に作用する神経毒……つまり、お前の持ついやらしさをありのままに引き出す薬だ」
「ぁ、ありのままって……ふざけないで! 私は、んっ、ぁう……そんな、はぁ、はぁ……い、いやらしく、とか……」
「そうやって拒めるのも今のうちだけだ。お前は大切な肉玩具だからな。手始めに快楽漬けで従順にしてから、血から愛蜜に至るまで、一滴残らず啜り尽くしてくれるわ」
「バカなこと言わないでよ……! 誰がそんな……ふぁ!? ぁ、ああっ……そんな、ぐちゅぐちゅ動かしたら……っんン……!」
ぴんと上下に張り伸ばされた少女の身体を、真下から剛茎が突き犯す。ピストンの速度が上がり、飛び散る愛液の量が増えるに従い、快楽がピエナの思考を汚染していった。
律動に揺れる視界の端から、ツタ触手が胸元めがけて這い寄ってくる。
「ぐふふ……感度がいいのは下だけではないみたいだな」
「ひゃあう! ん! んンっ!? 乳首、くりくり、締めつけて……ああっ、触手、からみついてる……!?」
勃起した乳頭にツタの先端が巻きつき、きゅうっと締め上げた。肉穴にあぶれたペニス型の触手も、膨らみかけの乳房に亀頭を押し当て、律動に合わせて揉みほぐしてくる。
「や、あっ!? 胸、びりびりして……あうっ!? おっぱいからも……熱いの、ぁあぅ、入ってくる……!」
催淫粘液は胸元の汗腺からも侵入し、ちりちりと熱い肉悦をもたらした。総毛立つような快感に、ようやく頭がとろけ始めた。
「ん、んんんッ! おっぱいも、熱くて……身体中、イキそうに、気持ちよくて……!」
子宮の奥底にずんっ、ずぐっ、という衝撃が伝わるたび、まぶたの裏側で白光が明滅する。産毛が風に嬲られるだけで、意識が飛ぶほどの浮揚感。
催淫成分によって鋭敏化された性感帯を同時に攻められ、ピエナがひとたまりもなく高ぶっていく。
「やめて……こんなの、続くと……身体も、頭も……おかしくなるの……」
「おかしくなる? ぐふふ……拒む理由がどこにある。さあ、おかしくなってしまえ!」
新しい触手が鎌首をもたげた。ただし、男根型ではなくツタの方。鋭く尖った先端が、律動する剛茎の上、尿道口に近づいた。
「い、いらない、そんなの……怖いの、やめて、私、どこか、飛ばされそうで……」
「そうはいくものか。言ったはずだぞ、償いだと。すべてを捧げて贖罪するのだ」
「ダメ、ダメなの、そ、こ……おしっこの穴……い、ぁあああああっ!? あっ、ああっ!!」
ピエナの尿道口に、するする触手が侵入していく。よせばいいのに見てしまう。挿入が止まらない。信じられないくらい深くまで押し入ってきて、皮膚が突っぱるような異物感がこみ上げてくる。ときおり焼けつくような痛みが尿道を襲い、嫌な汗が噴き出すが、恐怖よりもマゾヒズムを刺激された悦びの方が大きかった。
「どうして、私こんなことされて……はぁ、はぁ……クリトリス、あ、ああっ、勃起して、破裂、しそう……!」
媚薬成分はこの瞬間も心身の侵蝕を続けている。消耗しきった意識は性感と背徳的な光景の前に、抵抗を放棄した。
ピエナが狂っていく。
「はぁあっ、あ、んあっ、ぁああああっ! ダメ……も、ダメぇっ……!」
ぢゅぶっ、ぢゅぷっとリズミカルに触手が律動し、一撃ごとに、快感と尿意が膨れあがっていく。身体中が燃えるように熱くなる。濡れた秘部を生ぬるい風に撫でられただけで、失禁しそうなほどの快感が爪先から頭のてっぺんまで一気に貫いた。自分がどうしようもない淫売に堕する自覚にうなじのあたりがちりちりする。
「ぐふふ……力が抜けたぞ? ようやく観念したか」
「あ、うぁ……こんなぢゅぷぢゅぷ、ゆってる……」
膣口から立ち上るむわりとした生臭い熱気、それが自分の淫臭であることに気づき、目の前が真っ暗になる。
「あぐっ、はあ、ッあ……!?」
魔物が膣穴の触手を引くと、ピエナの身体はひとりでに肉穴をぎゅっと引き締め、抜かせまいとする。
「どうした、こんなに膣穴を引き締めて。引き抜かれるのが嫌なのか?」
「違うの……そんなこと、ないのに……やめ、ぁ……ああっ、勝手に力、入って……オマンコぎゅってして……なんで、どうして私、こんな……!?」
「入れられるのを嫌がっていたくせに、今度は抜かないでだと? わがままが過ぎるぞ、小娘」
「だって、出ちゃう……いま、今、それ、抜かれたら……おしっこ、出る……出ちゃぅうううううううっ……!」
「知ったことか! さあ、イクがいい……無様な姿を晒して絶頂しろ!」
「んぁ、あっ!? んぁあ、イク……イクの、もぅ……も、イク……イクぅううううっ!」
エクスタシーがピエナを飲み込んだ。
尿道口の栓を引き抜くのに合わせ、魔物は肉棒型の触手を膣奥までねじり込んだ。さんざん嬲られた尿管の奥が圧迫され、アクメに力を奪われ、ピエナにはどうすることもできない。
「あ、ああっ、ぁ、ぁあああァああっ……!」
恥辱と快感に、小柄な身体が痙攣した。深々と男根触手に貫かれた膣穴から、潮とも小便ともつかぬ体液が断続的に噴き出した。
「かは、ぁっ! んぁ、あ、ぁはぁあっ、あっ!?」
びゅくっ、びゅるぅうっ、と体液が飛び散る。そのたびにピエナの視界がまばゆい光に包まれた。
「ぐふふ……いいぞ、いい養分だ……さあ、もっと垂れ流せ!」
「やぁら、はっ、ぁ、匂い、キツくて……こんな、はぁ、っあ! はぁあああっ……!」
「いいぞ……さあ、どんどん飲ませるんだ!」
「やぁあっ、あ、ああああっ! 出てるのに、ダメ、おしっこの穴くりゅくりゅしたら、んぁァアアアッ!? ダメ、だっ、ぁっ、らめぇへぇえええっ!」
放出途中の排泄孔を、せき止められ、解放され、またせき止められて、ピエナが壊れていく。性器や乳房だけでは飽きたらず、排泄器官までもを玩弄される屈辱。快楽に流されてしまった自分への絶望……疲れ切った心身が、肉悦に汚染されていく。
「か、はぁっ、ぁ……うぁ、ぁ……はぁ、ァ……」
ようやく放出が止まるが、荒い呼吸は止まらない。身体中が性感帯になったみたいな恐怖と恍惚。のろのろと視線を巡らせると、股間からは小便混じりの愛液が、唇の端からは粘ついた唾液が、それぞれとろりと垂れ落ちた。
「はぁ、はぁ……んっぁ……糸、引いてる……やだ、これ……すごく、いやらしい……」
行儀悪く糸を引く粘液を、ピエナはぬぐうことさえできなかった。
「あ、ぅ……イカ、された……はぁ、はぁ……こんな、やつに……」
「たまらん滋養になる……ぐふふ……これは、早々に同胞たちにも味わわせてやらねばな……」
ピエナの身体を磔にしたまま、根を蠢かせて魔物が移動を始めた。巣とやらには何匹こんな魔物がいるのか知らないが、休む間もなく嬲りものにされ、犯し殺されてしまうだろう。その前に、それを悦ぶ色狂いになるかもしれない。気力体力ともに限界を要求される再試験。終盤にさしかかり、すっかり摩滅した心と身体には、快楽に抵抗する力はもはや残っていなかった。
「うあ……あ、ぁっ……んんっ……」
「悩ましげに身震いして……ぐふふ、余韻に溺れているのだな。心地よかっただろう? 絶頂し、刺激が途切れ、今は子宮が疼いているだろう? 儂らに身をまかせれば、途切れることなく狂わせてやる。喜ぶがいい」
「そ、そんな、こと……はぁう、ンっ……」
死にかけの心が崖っぷちで踏んばる。けれど、身体は……快楽を欲する身体は、すでに堕落を始めていた。気力の命綱がつかの間でも途切れれば最後、ピエナの肉欲は理性を裏切り悦楽を受け入れるだろう。
「なかなか強靱な精神力だ。褒めてやるぞ。だが、こんなものはまだ序の口だ。お前にはこれから、想像もつかぬ快楽を与えてくれる」
「あ……あ、あっ……そんなこと、されたら……私、もう……」
「戻れないか? ぐふふ……戻る必要がどこにある。お前にはもう、儂らの肉玩具として生きる道しかないのだ」
「それは困る。彼女は今、私の監督下にあるのだ」
「……なんだ、お前は?」
「ま……マシェロット、大尉……」
老樹が触手の足を止め、宙づりのピエナは脳みそのかわりに鉛が詰まっているような頭をもたげ、マシェロットはひどく格好悪いところを見られたような、なんとも苦い顔になる。
左手には剣を収めた鞘を握り、いつでも抜刀できるよう空の右肩が心持ち斜め前。特定の構えでなくほぼ自然体を維持し、どの方向にも均等に注意を払っている。信じがたいことに今の今まで背負っていたバックパックを、ゆっくりと肩から下ろした。何が詰まりどれほどの重量があるのか、置き場所に選ばれた倒木がみしりと軋み、森の地面がピエナの胴より太いその木の形にくぼんでいく。
「マシェロット大尉……ごめん、なさい、私……」
「すまない……遅くなった」
磔刑にされたピエナの謝罪をさえぎって、マシェロットがゆっくり近づいてくる。三歩目を踏みしめて四歩目を踏み出す前、鞘に収まっていたはずの刀がいつの間にか抜き身になっている。その単純な訓練を何万回積めば、彼女ほどの境地に至れるのだろう。ただ剣を抜くというそれだけの行為があまりにも芸術的で、ピエナは状況も忘れて感動する。
「それはどうしたことだ。お前、獣の血が流れているくせに、人間の肩を持つと言うのか?」
「…………」
「ぐふふ……沈黙……肯定というわけか。よかろう」
宙づりのピエナと帯剣した獣人との間、二種類の触手が寄り集まって壁となった。飛び越えられる高さではない。
「この女を取り返せるつもりならば、やってみるがいい。そして己の無力を思」
「はっ!」
最後まで聞いてやる義理は、マシェロットにはなかった。気合いの声とともに女戦士の姿がかき消える。
「むうっ! どこへ……」
「……そのまま動くな33番」
「大尉!?」
宙吊りにされたピエナの真後ろ、思いがけず近いところで声。並び立つ樹幹を続けざまに蹴って駆け上がり、ピエナの吊り上げられた高さまで螺旋状に回り込んできたのだ。空中にあるのを感じさせない自然さで獣人が身をよじる。左構えに引き絞られた切っ先がかすむ。
「しっ!」
「っ!?」
ようやく追いついたピエナの知覚が、かろうじて残像を捉えた。斬られた……そう思った。刹那、ピエナを束縛する力が緩む。振るわれたマシェロットの刃が、ピエナの手足にからみついたツタを両断したのだ。
「逃げるんだ、早く!」
剣を振った反動さえ利用して姿勢を制御し、後ろ向きのマシェロットが近くの幹に着地した。しなやかな足をたわめ、次の瞬間には再跳躍している。着地点めがけて殺到したツタ群は剣山の如き鋭利さだが、マシェロットの動きについていけない。彼女のかわりにミンチにされた樹幹がめきめきと音を立て、ゆっくりと倒壊した。
森が鳴動する。
一方、地上。地面には、魔物が移動用に使っていた無数の木の根が広範囲にのたくっていた。自分の胴より太い根がごろごろしているせいで、ピエナは自分がミニチュアになった錯覚を覚える。
「くっ……走りにくいし……足に、力が……! だけど、逃げなきゃ……大尉の足手まといになるわけには……」
荒海を凍りつかせたように波打つ足場をがくがく震える足で踏みしめ、マシェロットを狙う身丈より高いツタをかき分け、死にもの狂いでピエナが逃げる。けれど、萎えた爪先はもどかしいほど前に出ない。
「大尉は、無事なの……!?」
空を見る。分厚い緑の天蓋をバックに、木立を足場にしたマシェロットがムササビの如く飛び回っていた。金色の影が弱々しい木漏れ日の中を横切ると、斬り落とされたツタや男根触手が雨あられと降ってくる。
「大尉……あんな戦い方するのは、地上の私から魔物の注意を遠ざけるため……!? だけど……なんて綺麗なの……」
憎たらしいほどの余裕と、無駄がなく、洗練された美しい戦いぶりに見とれ、知らず知らずピエナの足が止まった。
それが、命運を分けた。
「……どこへ行く、小娘ぇっ!」
「きゃあっ!?」
緑色の大蛇となった触手群がピエナを呑んだ。触手はピエナの首から下に幾重にも巻きつきながら、彼女を地面に押し倒す。
「ぐ、ぁう……」
全高5メートル近い、山のような緑。その下敷きにされ、ピエナがうめく。もちろん首から上は緑色の山すそから外に出ているし、触手もある程度の自重は支えているが、つらい状況であるのは変わりない。
「っ……! 人質のつもりか……卑怯な……」
「ぐふふ……形勢逆転だな、女。これだけ分厚く囲ってしまえば、いかにお前の剣が鋭くとも一撃で助け出すことはできまい? それ以上儂に傷をつければ……娘が死ぬことになる」
魔物の言うとおりなのはピエナにもわかった。この状態では、たとえ妨害がなかったとしても、ツタを切り裂き人間一人をほじくり出すのに10秒は要する。その間に、ツタを伸ばして心臓をえぐるだけでいい。あるいは触手に込めた力をほんの少し抜くだけでいい。料理の仕方は選び放題だ。
「さあ……どうする、女。儂の言うことを聞くならば剣を捨てるのだ」
「大尉、私に……かまわず……!」
「…………」
幹を背に枝の上に立ち、動きを止めていたマシェロットが、猫のような身のこなしで音もなく地面に降り立った。
そして、信じがたいことが起きた。
「……わかった。言うことを聞こう」
「た、大尉!? どうして……戦ってください、大尉、どうか……」
マシェロットは剣をざくりと地面に突き立てた。片刃の刀身が、なかばまで土中に没する。
「33番、今、私はお前の監督人だ。試験はまだ終わっていない。お前にあきらめるつもりがないのなら、無事連れ帰る義務がある」
「……マシェロット、大尉……」
「そんな顔をするな。これは私の任務だ。お前が気にすることではない」
「ぐふふ、いい心がけだ……そうやって素直にしていれば、こいつの命だけは助けてやろう。わかったな?」
「くっ……」
棒立ちのマシェロットを、怒濤のようなツタ群が襲った。毅然としたマシェロットの着衣を破り取りつつ、彼女の身体を数メートルの空中、ピエナの正面まで吊り上げる。
同じ高さで目を合わせたことで、ピエナはますますいたたまれなくなる。あれほどの猛攻に傷ひとつ負うことのなかったマシェロットが、自分のヘマのせいで魔物の慰み者にされようとしているのだ。それも抵抗できないよう後ろ手に締め上げられ、上半身にはツタがいやらしくからみついている。
「大尉……」
「案ずるなと言ったはずだ。特務兵はあらゆる拷問に抗する訓練をしている。どんな恥辱も快楽も、私を揺るがすことなどできはしない」
「ほう、それは嬲りがいがある」
老木のしわがれた声が楽しげに歪み、肉棒触手の一本が、マシェロットの口内にもぐり込んだ。
「む、ぐぅうっ!?」
さすがに頭を振って侵入を拒むが、触手は口の中で一段と勃起しエラを張り、吐き出すことを許さない。
「むぶ、ぅっ!? ん! んん、んっ!?」
「ぐふふ……いいぞ、蹂躙されながら、なお凛々しいその顔つき……それが肉欲に蕩けていくのが愉快なのだ」
「んぶっ!? ん、んんっ、ぐ……!?」
男根型のそれがぶくりと膨張した。虚をつかれ、目を見開くマシェロットの口内に、多量の粘液がぶちまけられた。あまりの量に、頬が膨らむ。
「ぐふふ……」
「げほっ、ごほっ……はぁ、はっ……ぁ、な、なにを!? むぐぅっ!? ん、んんんっ!」
ツタがさらなる深みへ侵入した。食道にまで押し入ると、再度脈打ち、直接喉奥へと粘液を注ぎ込む。
「ぐぶ、っあ! かはっ、ぁ……はぁ、はぁ……」
たっぷりと樹液を嚥下させてから、男根型の触手がずるりと抜けた。おぞましいほど粘つく液が、ねっとりと糸を引く。
「こ、こんなもので、どうする……んぁっ!? ぁ……かはァッ!?」
鍛え抜かれ、それでいて女性らしい柔らかさを備えた身体がびくんっ、とわなないた。
「あ、な……!? こんな、どうして……!? 私には、くっ、耐性が……」
「儂はお前たちの何倍も生きているのだ、伊達に長寿と思うなよ。そこらの木々から、お前たちにとって薬毒となる成分を抽出し、新規に調合するくらい造作もないのだ」
「くっ、未知の毒を合成したのか……!」
「お前は元気が有り余っているようだからな。巣に戻る前に、少々搾らせてもらうぞ。それと、毒などではない」
「ならばなんだと……」
「お前のような気の強いメス猫を従順にする薬だ、ぐふふ……!」
「ひぐっ、う……あ、あっ……!?」
マシェロットの身体が、びくんと大きく痙攣した。未知の媚薬成分が胃壁を突破し血に乗って、彼女の正気を犯し始めたのだ。
「おっと、それだけではないぞ」
数本の細いツタがしゅるしゅると足首や太腿に絡みつき、女戦士の脚を無理やり開かせた。そこに、肉棒タイプの触手が這い寄ってくる。
「やっ、ぁ、やめろっ! こんなこと……ぁ、うぐううっ!」
「さっきまでの威勢のよさはどこへ消えた? そら……!」
「んぅううっ!? あ、かはっ、ぁ……太いの、ずぶずぶ、入りこんで……はっ、はぁあっ!?」
「大尉……!?」
「入って、くる……冷たくて、ごりごりしたの……ぁんっ! お腹、かき回してる……!」
エラを張り、先端の鈴口からカウパーのような液体をにじませた触手が、マシェロットの膣内へともぐり込んだ。途端、獣人の頬が弛緩する。目は潤み、唇は半開き、並びの良い門歯の間から赤い舌先がのぞく。それまでの厳しい武人の姿はそこにはなく、かわりにあったのは、快楽に溺れる浅ましい牝の姿だった。
「ぐふふ……心地よいか? こんなものは序の口に過ぎないぞ?」
「誰も、こんなの……ぁ、ああっ!? や、ぁあう!? な、に……お腹の中で、膨らんで……!」
「ぐふふ……自分が誰の玩具であるか……その身分、刻みつけてやるぞ。そら!」
「は、ぁあああああああっ!? 出され、てる……!?」
挿入してすぐに、肉棒触手が脈打った。女戦士の膣奥に、ぬるりとした粘液が注がれる感覚。過酷な鍛練で引き締まった身体の奥に、人のそれではありえない冷たい射精液が注ぎ込まれていく。
「ぁ、あう……どくどく、子宮の、中に、流れ込んで……! っ!? 冷たいどろどろの中に……ごりごりした硬いものが……こ、これは……!?」
「……今、お前の胎に種を植えた」
「種……そんな、大尉に何を……!」
「快楽を食って育つ芽だ。お前が肉悦に酔えば酔うだけ胎内で肥大し、根を張り芽を吹き育っていくのだ。もっとも……」
「ひぐ、ぁ……がはっ! こ、れ……お腹の中、焼けつくみたいに……ぐぅううっ!?」
「……最初と最後は少々痛いらしいがな」
肉棒に貫かれたままのマシェロット。その美貌が歪み、一気に脂汗が噴き出した。
「やめて……! 私なら……私ならどんなことされてもいいから、だから大尉には……!」
「はう、うっ! し、心配するな……私は、それほどヤワでは……がはっ……!」
「大尉!?」
「ぐふふ……小娘、この獣人が心配か? ならば……」
魔物が触手を繰り、二人の女を向かい合わせに配置した。後ろ手に縛られた彼女らは相変わらず宙づりのままで、マシェロットは分娩台に座るような大股開き、ピエナはうつぶせで上官の足のつけ根にキスできる位置。二人とも下肢にからみつくツタによって、秘部を晒したM字開脚を強要されている。
何を意図した体勢かは、問い質すまでもなかった。
「慰めてやるのだ、お前の舌でな」
「そうすれば、大尉の苦痛は……!?」
「それはお前次第だ。痛みを忘れるほど心地よくしてやればいいだけのこと。身を挺する覚悟があるなら、そのくらい造作もあるまい?」

「や、やめるんだ、33番……私は、平気だ……はぁはぁ、こ、こんな、痛みなど……ぅぐ! あああっ!?」
快楽を与えれば、マシェロットの中の種とやらが大きくなる……二言三言の中からでも、それがろくでもないことは理解していた。
「でも……少しでも大尉の苦痛が和らぐなら、私は……」
「やめろ……今、そんなとこ……は、ぁあっ、舐められたりしたら、私……」
ツタにからめ取られたマシェロットの美しい裸身。同性であっても目を奪われるその肢体に、ピエナはそっと口づけた。
「はぅ、むっ……んちゅ、ちゅ、れろ、ちゅむぅっ……」
「ふぁ、あっ……!? やめ……んぁあっ……! クリトリス、舐めるなぁ……っ!」
いまだ異物を咥えこんだままの秘部を、ピエナの舌が妖しく這う。マシェロットは凛々しい女戦士、それも、帝国最高武力、ガーランド・ガードの一員だ。そんな雲上人が、自分の愛撫で骨抜きになっている……その事実に、ピエナの胸中に奉仕の悦びと嗜虐心とが去来する。もっと彼女を啼かせたいと思う。もっと彼女の愛らしい姿を見たいと思う。
「マシェロット大尉……抵抗、しないで……私を……快楽を、受け入れて……大丈夫です、痛くしません。あなたの痛み、和らげますから……」
「やめろ……こんなこと、私は、こんな……あうっ!? 舌、ざらざらで、くぁあっ!? 刺激、強すぎて……!?」
「ちゅぐ、んむ、ふぁ……ひどい……こんな太いの、ぢゅぶぶぅって突き刺さって……大尉の綺麗なアソコが、ぱっくり開いてます……」
異物に蹂躙され、拡張され、濡れそぼった花弁……そのすぐ上、半剥けの肉豆が目に入った。充血したクリトリスはルビーのように赤く、早まる鼓動に合わせてびくっ、びくっと脈打っていた。
「苦しそう……楽になれるよう、私が、お手伝いしますね……」
「や、やめるんだ! それは……ぁ、ああっ、いま、そんなことされたら、私は……! やめろ、やめっ……」
「んむっ、ちゅぐ、んっ、ぢゅぐ、ちゅっ、んぢゅ、ぢゅっ、んぢゅぅうううううっ!」
「ンくぁああっ!? ひゃう、ン! んああああっ……!」
ピエナの唇が剛直に貫かれたままの膣口周囲や、混合液に濡れるクリトリスを吸い上げる。そのリズムに合わせて、マシェロットの腹筋が艶めかしくよじくれた。
「ちゅる、ん、んんっ、ちゅぐ……どう、ですか……? 痛み、消えましたか? 私の舌で、気持ちよくなってもらえてますか?」
「はぁあ……はっ、ぅあ、あ……」
「大尉の瞳、とろけてます……すごく綺麗で……まるで、もっと気持ちよくしてって哀願してるみたい……はぁ、はぁ……私、ン……なんだか、ぞくぞくして……!」
「いいぞ、娘。その調子で、お前の上官様を満足させるんだ。わかっているな? それが、足手まといの償い方だ」
「はい……頑張ります……頑張って、大尉に、もっと気持ちよくなってもらって……ちゅむ、はぅ、ん、んちゅっ、んぢゅ、ぢゅっ、ぢゅぅううううううっ!」
「や、っああっ!? これ、どうしてこんな、気持ちいいの……!? んくっ、あ、ああっ!」
「ぐふふ……素直でいいぞ……そうだ、お前にも褒美をやらねばならないな」
ピエナの脚の間を、するすると触手が這い寄った。奉仕行為に欲情し、ひとりでにほぐれた淫肉をかき分け、肉棒を模したそれが埋没していく。
「ふぁっ!? あ……私の中にも、大尉と同じもの、ぢゅぶぢゅぶ、入ってくる……! あ、ああぅっ! これ……すご、太い……!」
ピエナを貫く官能が、そのまま舌使いにも反映された。口づけた秘部からははしたないほどの水音が上がり、そのたびにマシェロットは三つ編みを揺らして悶絶した。
「嬉しい……私、大尉と一緒です……一緒に、やうっ、ん、犯されて……ぁん、んんっ、ン……!」
「や、ぁはァ……あっ!? や、め……んんァ……あっ!? はぁ、はぁ、っくぅううううん……ッ!」
ピエナの中に押し入った肉棒が子宮口を小突く。連続した刺激が、ひとたまりもなくピエナの理性を溶かした。舌奉仕は情欲を得て激しさを増し、媚薬に蝕まれたマシェロットの身体に極上の淫悦を刻み込んでいった。
「すごいです……んちゅ、ちゅっ……ぬるぬるがあふれて、止まらなくて……飲みきれないほど濡らして……ふふ、いやらしいんですね、大尉……でも、すごく可愛いです……」
こんな状況にありながら、ピエナは嬉しくてたまらなかった。
自分を殺す存在だとばかり思っていた彼女が、自らを犠牲にしてまで助けてくれたこと、その彼女に、これほどまでの悦びをもたらせること。
かつてない充実感に酔いしれながら、ピエナは絶頂めがけ、マシェロットの背を押していく。
「ちゅむ、んっ、ん、んちゅ、ちゅ、んぢゅぅううっ……! ふぁ、は、ァ……大尉のここ、ひくひくして……もう、イクんですね……?」
「やぅ、んんッ……! イカない……私は、くふ、ゃあっ、あっ……! こんな魔物に、犯されながら……イッたりなんて……!」
「まだそんな戯れ言を吐くか、しぶといメス猫め……小娘、もう少し嬲ってやれ、さあ」
「あっ……」
魔物がピエナの拘束を緩め、両腕の自由を与えた。ピエナはマシェロットの秘部を舌と指とで責め立てる。交互に送り込まれる二種類の刺激に、美しい毛並みがぴんと逆立った。鍛えられた腹筋がひくひくと波打ち、ぎゅっと引き締まる。
「ぁ、うやっ、ん、んぁあっ……はぁはぁ、ゃ、やめて……おかしくなるの……それ以上、いやらしいことされたら……あ、ああっ!? お腹の中で、何か……大きくなって、熱いの、広がって……!」
「ぐふふ……種が育ち始めたようだな。それに、娘、お前の方も高ぶっているようだ」
「だって、大尉が……私の指や、舌で……ぁうっ! こんなに感じてくれてるの見て……舌でクリトリス転がすだけで、どぷどぷ愛液あふれさせて……そんなの見ると、嬉しくて、感じてきて……あ、はぁあっ……腰、ぶるぶるしてる……ぞくぞくが、止まらない……!」
高まる欲情に後押しされて、ピエナの行為はエスカレートする。
「んぢゅっ、ちゅる、ぢゅ、ぢゅく、んちゅっ、んぢゅぅうううっ……!」
それまで以上に音を立てて啜り、肉豆を愛撫しながらアヌスや尻肉を刺激する。粘液に濡れた尻尾までしごくと、マシェロットは黄金色の髪を振り乱して悶絶した。
「これ、こんなの、ダメ……奥、ぐちゃぐちゃにかき回されて……何されても、気持ちよくて、ぁう、ん、んんんっ……!」
「ぐふふ……いいぞ、締めつけと膣壁のうねりが強まってきたな。そろそろイクのか?」
「イク……ものかぁっ! 誰が……誰、が……ぁ、ひゃぅううんっ!? はひ、ぅあ……んぁあああっ!?」
膣圧の高まりを受けて、触手が肉刺しの速度を上げた。それまでのピストンに加え、左右によじくれ強い刺激を与えてくる。
ぢゅぶっ、ぢゅぐ、ぬぶっ、ぬぶっ、ぢゅぶぶっ……!
「んっんッ! ダ、メ……らめぇっ、あっ、んんっ、っぅ、ッああああっ……!」
「はっ、はぁ、はぁ、ァっ、んぅううあっ……!?」
二人の喉からあられもない声がほとばしる。ピストンに合わせて、ぬちゃぬちゃと淫蜜の音がこだまする。
「ねじれて……お腹の中、んぁあっ、ダ、メ……こんなの、こんな……あっ、あっ、ンぁあああっ……!?」
「大尉……私、もう……」
「はぁ、はっ、ぁっ、わ、私も……ダメなのに、こんなの……ダメ、なのに……あ、ああっ……もう、イク……イクぅうううっ……!!」
「あっ、んぁっ、私もイキます……大尉と一緒に……ん、ぁあっ、あ、はぁああああああっ……!!」
二人が同時にエクスタシーを迎えた。折り重なった二つの身体が淫潮を漏らし、全身を強ばらせながら、びくびくと痙攣する。
それでもマシェロットの快楽地獄は終わらない。
「ら、めぇええっ! イクの……はっ、あっ……イクの、止まらないぃ……!」
「大尉、可愛いれす……んっ、ちゅむ、んぢゅっ……」
「やめ、ぁう……そんな、あっ、んぁあっ!」
アクメに朦朧としたピエナが、情欲の赴くまま、そこらじゅうに口づけをする。激しく絶頂した直後、さらには植えられた種が悪さをするおかげで、マシェロットはキスだけで再び絶頂を迎えた。
「くふぁああっ、あ、んぁあっ……イクっ、また、イクぅううっ……!!」
快楽の余韻を吸い上げて、胎内の種が大きくなっていく。舌奉仕をしているだけでもマシェロットの腹が張ってくるのが感じられた。
「はぁ……はぁ……マシェロット、大尉……」
「んぅっ……ぁ、はっ……はっ……ァ……」
半人半獣の美しい武人が大きく身をよじり、ピエナの頭が大きく揺さぶられた。その衝撃に、かろうじて正気が戻ってくる。だが、それもまたいつ消えるかわからない。同時に絶頂した二人が、ままならない手足を動かし、互いに支え合うように裸身をすり寄せた。
「大尉……ごめんなさい、私……どうしても、大尉が苦しんでるの、見てられなくて……」
「はっ、はぁっ、んくぁ、ァ……! へ、平気よ……これくらい、なんとも……っつ!? ぁ、ぁああうっ!? 動いてる……まだ、大きくなって……!?」
「あ、ああっ……この種を取らないと、大尉がおかしくなっちゃう……早く、なんとか……きゃあっ!?」
絶頂に力を失う二人の身体に、新しい触手が巻きついた。腕や肘と一緒に胴体をぐるぐる巻きにして抵抗を封じると、踏ん張りもきかない宙づりのまま運んでいく。
巨大な魔樹が女二人を抱えて進む様はまるで、子供が両手にそれぞれ人形を握りしめ、自慢しているようだった。
「さて……種が芽吹いた以上、もはや暴れることもかなうまい。二人とも、連れて帰って犯してやるぞ、ぐふふ……」
「はぁ、はぁ……この、魔物め……ふざけないでよ……」
「そう邪険にすることもあるまい? そうだ、お前にもあの女と同じ種を植えてやろう。種が成長すれば腹を食い破りお前たちを殺す。だがそれは、快楽の果てに絶頂の中で迎える死だ。本望だろう?」
「誰がそんなこと、望むもんですか……!」
「望むようになる、すぐにな。おっと、せっかくの玩具、落として壊しでもしたら大変だ。丁寧に運ばねばな、ぐふふ……」
二人を宙づりにする高度が下がった。魔物は地上1メートルほどの高さに二人を固定して、根を蠢かせて森を行く。
そのときだった。
「……あ……!」
視界の端に、地面に突き立った剣が見えた。あとは無我夢中だった。背筋がねじ切れるほど足を伸ばし、柄を挟んで跳ね上げる。亀のように首を伸ばし、思いきりグリップを噛みしめると、頭を振ってツタに刃を突き立てた。腕の拘束が緩むより早く強引に肩を抜き、肘を抜いて、柄を握る。
「はぁああっ!」
ピエナは今度こそ自分と魔物を繋ぐ触手を断ち切った。
「むうっ!? 小娘、お前、まだそんな力が……!?」
痛覚などなさそうな魔物だが、不意をつかれて吃驚する。熱湯に触れた手を引っ込めるように、ざあっとツタが引いた。よほど驚いたのか、マシェロットの身体も取り落としてしまう。
「大尉……!」
「ぐうっ……!」
「不覚……だが、もう一度捕まえればいいだけのこと。なにしろ、さっきより弱っているのだからな」
「来る……!」
細い触手はいくつかの束になり、太い触手は単独で、四方からピエナに襲いかかる。だが、今の彼女にはどこを斬ればもっとも効率的なのか、おぼろげながらわかっていた。
「こんなもので……捕まえられると思わないでよっ!」
「っが、ぁあああああっ!? き、貴様、この獣人がどうなっても……」
「ぜぇええあっ!」
最後まで歌わせず、逆袈裟に刃を跳ね上げる。視界の中央では何本もの触手がちぎれて飛び、端ではへたりこんだまま、肩で息をするマシェロットの姿があった。
(大尉は動けない……こっちに注意を引きつけなきゃ!)
踏み込んで、触手の前に身を投げ出す。すべての矛先が一斉にピエナを向いた。殺意を宿した緑の津波がめちゃくちゃな機動で迫ってくる。
「イメージするのよ、ピエナ……頭の中に焼きついてる、大尉の動きを……!」
独白が呪文であるかのように、切っ先が加速する。くたびれ果て、力の入らない身体。動きを止めればおしまいだ。萎えた手足は立つことさえ拒むだろう。
「もっと、もっと……大尉はこんなものじゃなかった……流麗で、力強くて、流れるように美しかったはず……!」
降り注ぐ矢の如き触手。必殺の勢いがこもった一撃一撃を、丁寧に、大胆に、斬り落とす。網膜に焼きついたマシェロットの斬光と、目に映る刃の銀色がだんだんと重なっていく。
敵は、あと一歩のところでピエナを捉えきれない。
そのかたわらで、マシェロットの戦いも始まる。
「はぁ、はぁ、あの魔物、人のお腹に、なんてことしてくれるんだか……だけどこんなもので、私を堕落させられると思われたら困るのよ……」
膣口に指を突っ込む。思ったよりもずっと浅い部分で異物に触れた。おぞましさをこらえながら、その異物感をつかみ出す。
「こんなものが、私を苦しめて……!」
太さも色形も男性器に似た肉芽には、まぶたと目玉のようなものが備わっていた。鈴口にあたる肉の裂け目がまぶたのように開き、その下で、赤い目玉がぎょろりと動く。
「いい加減に私の中から出ていってもらうわ……く、ぁ……ああああっ!」
どこに口があるのか、ぴぎっ、という悲鳴を発する肉茎を、力任せに引き抜いた。
「は、ぁあ……かは、ァ……!!」
ぞくぞくした性悦がマシェロットの膣奥で弾け、下半身を貫いた。獣毛に覆われた膝がひとたまりもなく震える。ぱっくりと開いた膣口からは、透明な淫蜜がどろどろとこぼれた。それでも彼女はかろうじて剣のところにたどり着き、生まれたての魔物を滅却し、手に馴染む剣の重みに勇気と気力を取り戻した。
「大尉……なんて精神力……!」
「……止まるな33番……後ろだ!」
「は、はいっ!」
見向きもせず、背後から押し寄せる触手を切り裂く。同時に逆方向から襲いかかったツタの腹を蹴り飛ばし、泳いだところを返す刀で薙ぎ払った。
養分の供給を絶たれ、あっという間にしおれた魔茎を捨ててから、マシェロットも自分の剣を探し出した。本調子にはほど遠いが、それでもピエナに加勢する。
「魔物め、色々ともてなしてくれたな……はぁっ!」
「ぐうっ! お、お前たち、これほどの強さを……!? あ、ああっ、儂の身体が刻まれていく……!?」
それまで記憶の中のマシェロットをなぞっていたピエナは、間近で見る本物の戦い方を模倣することに切り換える。
マシェロットもピエナのやり方に気づくと、少女の呼吸を探りながら、慎重に慎重に、速度を上げていった。
「くっ……そんな、まだ、速くなる……!?」
ピエナはがむしゃらに追いすがる。訓練生の領域を超えた速度まで追いつかれたことにマシェロットが驚いていることなど気づきもせず、遅れたら死ぬとばかりにピエナは無我夢中で追いすがる。
「ぐっ、あ……!? わ、わかった、儂が悪かったから、もうこのあたりで……」
「あと少しです、大尉! もうすぐ本体が……」
「見えた!」
堅牢極まるツタの守りが突破され、老木の本体が露わになった。二人は左右対称に展開し、茶褐色の幹を挟んで向き合った。それぞれ右肩に触れるほど剣を引き絞る。
「や、やめろ! これ以上は死んでしまうではないか! そもそも、儂はお前たち人間の引き出した魔力が……」
「知ったことか、そんなもの!」
「あああああああっ!!」
丸裸にされた魔樹に、左右から、二本の刃が段違いに食いこんだ。
マシェロットは、見た。
自分の刃と同時に魔物の胴に食い込み、真一文字に薙ぎ払われた訓練生の刃。
その切っ先が、自分のそれより半瞬速く、魔物を両断したことを。